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石井みき

親子で通うポートレイトスタジオ


 先週に引き続き日曜日の昼前、コッタと私は入谷駅近くのスタジオへ向かった。油絵の道具を二人分入れたスーツケースを引きずって行くので、近所の人から「お揃いで、旅行ですか?」と聞かれた。描いている時間は計4時間程度だが、休息時間、準備と片付けの時間もあり、帰りは最終バスに間に合わないほど遅くなってしまう。ちょっとした小旅行のようだ。

 今回はモデルに向かって左側(ライトのあたる側)から描きたかったので、30分早く到着し、スタジオのドアが開くと同時に、場所を確保した。絵の具を二人でシェアしているので、私達は隣同士で座りたい。入室時はちょっとした席取り合戦のようになる。

 今日は顔を描いてみようと、決めていた。このところ毎日YouTubeやインスタで世界中のアーティストのHow toものを見て油彩画の研究をしている。研究というか、見とれているばかりなのだが。世界的に絵のレベルが上がっているのか、それとも、インターネットの発達のおかげて、今まで隠れていた才能あるアーティスト達が目につくようになったからなのか、検索していると、次から次へと目を見張る素晴らしい作品に出逢う。

 アーティストによってポートレイトの描き始め方はいろいろのようで、私はその中でも一般的な、まずは茶系一色の下描きをすることにした。動画を見ながらイメージトレーニングして、準備万端のつもりだったのだが、実際にスタジオで白いキャンバスの前に座ってみると、どこからどう始めたらいいのか、最初の20分ポーズは焦るばかりで、あまりカタチが決まらないまま終わってしまった。

 コッタは、この最初のポーズをささっと決める。人物や静物や風景を見てスケッチするのは、コッタのほうがずっとうまい。小さい頃からそうだった。

 私は「まず目の位置がここ。そうすると鼻の位置はこの距離にあって、そこから影はここまで…」と考えながら、目で測りながら、一カ所ずつポイントを決めていき、描いては消し、また描いては消し、という作業を繰り返していく。コッタはこれをせずに、速いスピードで、見たとおりに描いていく。隣りからコッタのさっさ、さっさと筆を動かす音が聞こえてくる。

 20分のポーズが、合計12回ある。半ばを過ぎても、今日はコッタも私も、モデルと全然似てない。どう直せば良いのかわからないまま、時間切れ。やっぱり難しかった。

 帰りの電車の中で、二人とも自然とインスタで名画を検索し合っていて、「こんな風に描けるようになりたいね〜」と、ため息をついていた。

 最近四六時中、絵の話ばかり。つくづく幸せだなぁと思う。 





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